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2023.2
【創作】バレンタイン2023
Sさんの作品は読みごたえがある。ページ数も多いし、ストーリーも骨太。そこに乗ったキャラクターたちの心情の変化がいつでもとても豊かに描かれている。傾向としてはシリアスなものが多い。わりとパターン化されていて、すれ違いがあり、避けたりぶつかったりしながらも最後はお互いの気持ちをちゃんと理解し合う、というもの。
この人は切ない話ばかり書くなあといつでも思っている。紆余曲折を経て最後はいつもハッピーエンドになるのでその点は安心して読むことが出来たのだけれど、どの話もすれ違いや喧嘩、忘れられない過去の相手の登場という不安要素が必ずあって、もやもやした気持ち、もどかしい気持ちにさせられる。作品数はかなり多い方だけど、どの作品もそうだ。たまに違うカプを書いてもそうだ。
物語の中でくらい幸せな二人を見ていたい私としては、自分とは正反対だなあと思っていた。でもだからこそ物語に深みが出る(最後に確かめ合う二人の気持ちが強固になるとか。落としてあげるみたいな)とも感じていた。そこがこの人の作品の好きなところだ。好きだけれど、憧れるかと言えばそれはまた少し違うかな、とも。
ところが最近の私は、すれ違う二人の話ばかり書いている。 なんか、そういう時期っておとずれるものなのだろうか。 一応自分の中ではまごうことない両思いで、そこに行きつくまでの過程としてすれ違っている二人を書くことが楽しいのだけど、まさにそういう感じ?だって、この設定の二人に関しては両思いになって幸せになるところよりも、色々な葛藤とかすれ違いとか些細な嫉妬とか、そういうのをかくのが楽しい。その先の幸せな未来は、きっとあるのだけど、その場面を書きたいとそこまで掻き立てられない。
Sさんがどういう思惑で書いているのかはまったくわからないけど、やっぱり年々趣味嗜好って移ろうものだなあと感じる。テセウスの私だ。
ということで今年のバレンタインはすれ違い両片想い~季節のモブを添えて~と相成りました。
これの元ネタはTwitterでみた『女の子にチョコを頼まれたとき、「俺からは渡せない」と断る方が攻めで、預かったチョコを攻めに渡して怒られる方が受け」というもの。
あ、11は即答で断る。ってぴんときた。からの妄想に火が付いて、出来上がったストーリー。
以前あげた『焦燥はそれでも甘くて』の世界線。大学講師11×大学生6。
あの話より後の出来事だけど、相変わらずくっついてなくてたいして進展もせずもだもだしている二人。
この二人を書くのがいま本当に楽しい。と言ってもこれ以上のネタとか展開とかはないんだけど、両片想いという前提で二人が勝手にから回ってるの、楽しいなあ。だって全部杞憂なのに!いつかくっつくとも知らないで…、なんて思いながら書いてる。
恋に不器用な6、これまた大好きなんだなあ。
書きたかったのは主にモブ女子さんのくだり(「“ガチ”なんだろ」「…うん、一目惚れ」の部分!11の気持ちを思うとぐーーーってなる…!)なので、この後のことはあまり考えていない。
まあでもお互いがお互いに渡すチョコレートもあるし、この後時間を作ってちゃんと会うのでしょう。
6に最後声を掛けたのはモブ女子さんです。11に背を押されたこともあり、頑張ってチョコレートと連絡先を渡すことに成功します。6はあまりにも想定外の出来事で混乱するけど、相手がとても一生懸命なのが伝わるのできちんと受け取るでしょう。一応11の研究室の人だということは認識している。付き合っている人いますか?って聞かれて、そんな相手はいない、けど…みたいな感じで語尾を濁すから、「あ、好きな人いるんだ……」ってモブ女子に伝わる。悲しきかな彼女の恋はここまでです。ごめんね。今後は研究室で会ったら軽くおしゃべりできるくらいの仲にはなれるかもね。