005 アイス

※機関員6+13+14
※ゆる機関



 厨房に入ろうとすると、中からくすくすと笑い声が聞こえてきた。ノーバディらしからぬ様子に怪訝に思いながらゼクシオンが入り口からこっそり中を窺いみると、ロクサスとシオンが何やら貯蔵庫の前で身を寄せ合ってこちらに背を向けている。音をたてないようにして厨房内へ滑り込み二人の背後に近づいて様子を見ると、どうやら彼らの狙いもゼクシオンと同じものだったようだ。
「……サイクスに怒られちゃわない?」
「アクセルも巻き込めばきっと平気だ……ほら」
 こそこそと話しながらロクサスが取り出したのは、ひんやりと冷気漂う三本の青い棒付きアイス。心配そうにしていたシオンもそれを見るとぱっと目を輝かせた。
「トワイライトタウン以外でも食べれるなんて知らなかった」
「サイクスのへそくりだってアクセルが言ってた」
「へそくりってなあに?」
「さあ」
「家計とは別の個人用貯蓄のことです」
「わあ!!」
 予期せぬ声にロクサスとシオンは二人して声を上げて貯蔵庫の前から飛びのいた。後ろに立っていたのがゼクシオンだとわかると、ほっと胸をなでおろした様子だ。
「驚かすなよ……サイクスだと思っただろ」
「いったい二人でこそこそ何をしているんですか」
 ゼクシオンは腕を組んでじろりと二人を見下ろた。ばつが悪そうな表情の二人の手にはシーソルトアイスが握られたままだ。
 やがてシオンが白状する。
「お城でもシーソルトアイスが食べられるってロクサスが教えてくれたの」
「俺はアクセルから聞いたんだ。サイクスが買ったやつがあるはずだって」
「……度胸は認めますよ」
 そういってゼクシオンはちらりと貯蔵庫の方を見やった。若き二人を糾弾するつもりできたのではない。ゼクシオンとて、狙いはサイクスのへそくりこと秘蔵のシーソルトアイスを頂戴することだった。ただ、他にこれのことを知っている者がいたことは予想外だった。
「これ、一本ゼクシオンにあげる」
 おずおずとロクサスが手に持った三本のうち一本をゼクシオンに差し出してきた。口止め料ということだろうか。
「おや、ありがとうございます。では遠慮なく」
「ちなみにそれ最後の一本だから」
「え」
「あとはよろしく!」
 呆然とするゼクシオンを尻目にロクサスとシオンはそそくさと連れ立って厨房から出ていった。



お題『アイス』/機関員6+13+14