010 友達

※機関員116 R18
※不健全な関係、お題は曲解しています

 

 迫り上がるなにかが頂点に達する寸前、股ぐらに埋めている頭を強く押さえつけた。くぐもった呻き声が聞こえるが構わずに髪の毛を掴み強く押さえこみ、口腔内で舐(ねぶ)られていた性器を一思いに喉奥へ突き進める。ぬるく温かく包まれていた性器が狭い喉奥をこじ開けて気道にまで侵入する。先端がぎゅうと収縮するのを感じた瞬間、堪えていたものが爆ぜた。脊椎を通って脳まで抜ける快感に、マールーシャは思わず目を瞑り身震いをする。

 出せる限りを尽くして長く息をついていると、足の間にいる相手が本格的に暴れ出した。力任せに下肢を叩かれる。そう言えば、喉を塞いでいたのだった。
 手を離し解放すると、聞くに耐えないえづき声をあげながら相手は床に崩れ落ちた。喉を通らなかった白濁がぼたぼたと床に落ちるのに、マールーシャは眉を顰(しか)める。喉奥に放ったと思ったが逆流してきたのだろう。全て飲み干せとは何度も言えど、それが叶ったことはまだない。

 長い時間咳き込み、ようやくそれが収まると相手は憎々しげにこちらを見上げてきた。普段は死人かのように白い顔は上気して赤く染まり、顔中の穴という穴からなにかしらの体液が流れ出していた。日頃冷静沈着な若き策士の姿とはかけ離れた無様な姿を目の当たりにするのは愉快でマールーシャは目を細める。

「急に出すなって、あれほど」

 ゼクシオンはそう言いながら睨みを効かせるものの、再び込み上げてきたのか口元を覆って咽せ始めた。彼の都合など知ったことではない。恥も外聞もかなぐり捨てて恍惚と舐めしゃぶっていたのはそちらのくせに、とマールーシャはまだ床に座り込んでいるゼクシオンを見下ろした。
 ようやく落ち着いた様子でゼクシオンが立ち上がった。ベッドに腰掛けているマールーシャを見つめるその目には、まだ情欲の青い火が灯っている。

「あれで終わりなんて言わせないですよ」
「お前次第だろう」

 冷たく言い放つと、ゼクシオンは不満げに口を結んだ。反論はない。しかしマールーシャの脚を開かせると、再びそこに身体を滑り込ませた。先ほど自分の口腔内を蹂躙したそれを、懲りもせずまたしても口に含む。白く濡れた先端を舐め取り、舌と唇とでゆっくりと愛撫を始める。たっぷりと唾液を絡ませ、マールーシャへと時折り視線を送りながら、舌先ばかりで刺激した。
 焦らすような触れ方に、一度射精して少し威力の衰えたように思えたそれは、再び昂りを見せていく。ゼクシオンもそれで満足したらしく、口を離すと再び立ち上がった。
 乱暴にマールーシャを突き飛ばしてベッドに横たえると、自分もベッドに乗り上がって腰の上に後ろ向きで跨った。暗い部屋でゼクシオンの真っ白な背中が光る。背骨のおうとつがくっきり浮き上がっていて、目が離せない。
 細い手でマールーシャの陰茎を包み込むとゼクシオンはそのまま腰を浮かせ、その先端を自身の後孔へ当てがった。

「おい、顔が見えない」
「貴方はもう満足したでしょう」

 不満を述べるがゼクシオンはそれをぴしゃりと一蹴した。

「それに、そんな必要がありますか?」

 肩越しにちらりと目をこちらに向けてゼクシオンは問う。

「愛し合っているわけでもないのに」

 嘲るように言い捨てると、ゼクシオンは手で支えた陰茎の上から、静かに腰を落としていった。肉壁を割って窮屈なゼクシオンの体内へと入り込むと、呻くような声はさっきとは一転してつややかに響いた。
 ろくに収まらぬうちからゼクシオンはベッドに手をついて身体を揺すり始めた。浅いところばかり擦るのでは物足りないが、どうやら彼は一人で楽しむつもりらしい。艶めかしい声があがるのはそそられるが、顔が見えないのではつまらない。

 マールーシャはついさっきまで自分の脚の間で恍惚としていたゼクシオンの表情を思い起こした。白濁のつたう口元、濡れた唇。自分の性器を押し込むばかりの小さな唇に、まだ触れたことがないことにその時初めて気付いた。

 

お題『友達』/機関員116

*セックスフレンドという解釈