012 過去/未来
「いりません、そんなもの」
恭しく掲げられた赤い花を一瞥してゼクシオンは言い捨てた。花言葉がどうのこうのと気障ったらしく説明されるのもうんざりだった。明日も知れぬ身だというのにこの男は平然と未来を語る。花は枯れ肉体は朽ちるのに、永遠、などとたわけたことを。
(僕が欲しいのは――)
眼前の薔薇を払い捨て、自分より背の高い男の胸ぐらを掴んで力任せに引き寄せた。大事な花は砕け散ったのに、相手は愉快そうに笑みをたたえている。嗚呼、気に入らない、何もかも。
不確かな未来でも、知り得なかった過去でもない。
望むのは、今この瞬間あるその青い瞳が自分を映すこと、ただそれだけ。
お題『過去/未来』/機関員116