二夜 - 4/5
見慣れぬ天井、見慣れぬ部屋。なんでここにいるんだっけ。ぼんやりと昨夜の出来事を思い出そうと顔を上げると、すでに服を着たゼクシオンがマールーシャを覗き込んでいた。途端に昨夜の出来事が一気に思い起こされた。
「素敵な夜でしたね」
優しく微笑むゼクシオンが眩しくすら思える。デジャブのような光景に困惑しつつも、ふと見れば手を握られているのを見て、昨夜のやり取りは夢じゃなかったんだ、とマールーシャは一人こみ上げる感動を噛み締めた。
「起きれますか? 朝ごはん、食べれます?」
「ああ……いただく」
「よかった。じゃあ先にシャワーをどうぞ」
起き上がり浴室へ案内されてシャワーを浴びる。熱いシャワーに打たれながら、これが夢ですべて洗い流されてしまったら、などと考えていたが、服を着て部屋に戻ると明るいダイニングにはコーヒーの香りが立ち込めていて、それは夢などではなく、幸せな現実だった。
向かい合ってテーブルに着き、ゼクシオンの用意してくれた朝食をいただく。他愛ない会話をしながらも、マールーシャは頭の中では昨日の夜を反芻していた。食事が終わり、コーヒーの湯気が緩く立ち上るのをぼんやりと見つめる。
「昨夜言ったことだけど」
意を決して切り出すと、はにかみながらゼクシオンは頷く。かわいい。
「嬉しかったですよ」
「君の言った通りだ。今は女性のことは考えられなくなってしまった」
マグカップを置いてマールーシャは向かいに座るゼクシオンをまっすぐ見て言う。
「私と付き合ってほしい」
ゼクシオンは微笑んで口を開いた。
「――いや、付き合うとかそういう面倒なのはちょっと」
え?