057 手を繋がないと出られない部屋2

 前略、例の部屋。

 

「またこの部屋……」

 ゼクシオンは頭を抱えた。
 ドアも窓もない密室。隣りにはマールーシャ。もはやお馴染みの部屋である。

「さっさと今日の任務を済ませなくてはならないというのに」
「まあ、楽な方でよかったんじゃないか」

 マールーシャですらすっかり慣れ切った様子でにこやかに左手を差し出した。
 今回の部屋は『手を繋がないと出られない部屋』である。

「既視感……」
「右手を出せよ。左手だとまた握手になる」
「わかってますって!」

 前回の失態を思い出して不機嫌になりながらゼクシオンはむんずとマールーシャの手を掴んだ。簡単に部屋の錠が解かれる音が聞こえたのでひとまず退路を確保できたことに安堵する。あと何度この手の部屋に遭遇するのだろうか。

「開いたようですね。って何してるんです」

 出口に向かって歩き出そうとするゼクシオンが足を止める。雑に掴んだマールーシャの手は未だに自分の手を握り返したままだし、マールーシャはなんとか指の間に自分の指をねじ込もうと真剣になっている。

「ドア、開きましたけど」
「このまま任務と洒落こもうじゃないか」
「何言ってるんですか、お花畑も大概にしてください」

 呆れて手を振りほどこうとするも、いつのまにかしっかりと指を絡めたその手はマールーシャに力強く握られてびくともしない。

「偵察任務など片手があれば十分だ」

 マールーシャはそういうと自信ありげに右手を掲げてみせた。いったいどこからそんな自信が湧いてくるのだろう。自信あってか、マールーシャはどこか楽しそうだ。
 ふうん、とゼクシオンはマールーシャを眺めていたが、やがてその挑発的な笑みに乗りかかるようににやりと同じく口角を上げるのだった。

「退屈させないでくださいよ」
「忘れられない任務デートにしてやろう」

 

*このあと6は全力を尽くして11を妨害するし、頭に来た11は策士小脇に抱えて派手なアクションを繰り広げるし、やがて任務そっちのけでバトり始める


今日の116
手を繋がないと出られない部屋に閉じ込められる。数十秒でクリアし、手を繋いだまま退出。何事も無かったかのようにデートに出かける。