魅惑の琥珀色 - 3/3
来る道よりもゆったりした足取りで家路へ向かう。腹もくちく、暖かく、満たされた気持ちで歩いた。暗い道を時折吹き付ける風は冷たいが、熱いものを胃の中に収めたからかまだ寒さはさほど気にならない。
ゼクシオンは言葉も少なくのろのろと歩いている。ふらふらとしているので腕を引くと、服越しに体温が高いのに気付く。すっかり眠たくなってしまったようだ。
家に着くころには吹き晒しにされた身体が冷え始めていた。歯を磨いて着替えたら、すぐさま布団にもぐりこむ。背徳感がすごいとかなんとかむにゃむにゃとしゃべるゼクシオンをベッドに押し込んで、マールーシャもその後に続いた。
「今日、すごく贅沢じゃありません?」
ゼクシオンは呟いた。
「欲のままって感じで」
「どれがよかった?」
「ラーメン」
「だろうな」
想像通りの即答に笑って、マールーシャは部屋の明かりを落とした。暗くなった部屋で一つ布団を共にして身体を落ち着けると、微睡みはすぐにやってきた。
まさに眠りに落ちる間際、もぞもぞと隣の山が動いたかと思うとすぐ近くまで寄ってきた。朦朧としながらもマールーシャが腕を広げると、ピタリとその間に収まる。ジャストフィット。
ああ、これが今日一番いい、とマールーシャは眠い頭で思った。欲のままに過ごして、最後に得られる安心感。
きっと相手もそうなのだろう。呼吸はすぐに安堵を含んだ寝息に変わった。
貪欲だった夜は満たされて、穏やかに更けていく。
20201207